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伴走・実行支援 2026年9月28日

掘る問題と、掘っても解決しない問題

「どうして、彼はここをやってくれないんだろう」「なぜ、このタイミングでミスが起きるのか」。経営者として会社を背負っていると、日々のもどかしさから、つい「なぜ」という問いが口をついて出ることがあります。原因さえ分かれば、次の一手が見えるはず——そう信じて理由を探るのは、責任感があるからこそだと思います。今日は、そんな「原因を掘ること」が効く場面と、いくら掘っても答えにたどり着かない場面がある、という話をします。

数字や不良などの「正解がある問題」は、根っこまで掘る必要があります

まず最初にお伝えしたいのは、原因を徹底的に掘り下げることが正解である場面が、間違いなく存在するということです。試算表を見て「利益が減っている」と感じたとき、現場で不良が続けて出ているとき。ここは掘るのをやめてはいけない場面です。

「なんとなく景気が悪いからだ」で止めてしまえば、打てる手は「耐えること」しかなくなります。しかし、そこを掘り下げて「実は特定の製品だけ原価が上がっていた」「回収サイクルが数ヶ月遅れていた」という具体的な原因にたどり着けば、打つべき手は見えてきます。不良品も同じです。機械の調整不足なのか、手順のミスなのか、原材料が変わったのか。原因と結果が一本の線でつながっている問題は、根っこを掘り当てるまで諦めないことが、いちばんの近道になります。

資金繰りの見通しが立たないときも同じです。「なんとなく心もとない」で止めず、「回収が滞っている得意先はないか」「多く仕入れすぎていないか、在庫が増えていないか」「支払金額が増加している仕入先はないか」などをチェックしてみることです。

人が絡む問題は、掘れば掘るほど迷路に入り込むことがあります

ところが、世の中には「なぜ」と問い続けても、解決に近づかない問題があります。人間関係や、組織の空気といった、人が絡む問題です。

ある幹部社員が指示待ちで、自分から動こうとしない。「なぜ主体的に動いてくれないのか」と問う。本人は「自分では判断できないので」と答える。さらに「なぜ判断できないのか」と掘り下げると、「責任を取りたくないからだ」という答えが返ってくるかもしれません。ここからもう一段、「なぜ責任を恐れるのか」と掘ることもできます。しかし、本人に「なぜ」を重ねてたどり着いた答えが、はたして解決につながるでしょうか。

ある社員が朝からひどく機嫌が悪く、仕事に身が入っていない。理由を掘ってみたら、「今朝、家を出るときに家族と喧嘩した」だったとします。あるいは「通勤電車で不快な思いをした」のかもしれません。原因は、確かにあります。しかし、社長であるあなたが、その社員の家庭の事情や通勤途中の出来事にまで手を伸ばして解決することはできません。

原因が分かったとしても、その原因が本人の外側や過去にあり、今の自分たちの手ではどうにもならないことが、少なくありません。

原因の深掘りを、一旦しまっておく

「なぜ」を突き詰められるのは、相手が機械や数字のときです。相手が人になると、掘れば掘るほど、相手は「責められている」と感じて、心を閉じていきます。すると、本当のところはかえって見えなくなります。

もちろん、ルール違反や明らかな怠慢は別です。厳しく向き合う必要があります。ただ、日々のもどかしさの多くは、単一の原因ではなく、いくつもの事情が絡み合って起きています。そういうときは、「なぜ」をいったんしまって、「今、何が起きているか」をただ眺めてみる。それだけで、こちらの構え方が変わり、相手の様子にも少し変化が現れることがあります。

たとえば、理由を問い詰めるのをやめて、「今日はしんどそうだな」とだけ受け止めてみる。それだけのことですが、詰め寄られなかった相手は、数日後にふと自分から話し始めることがあります。答えを急がなかったことが、結果的に近道になる。そういう場面は、決して珍しくありません。

まとめ──今日できる一歩

掘るべき問題と、掘っても解決しない問題。この二つを瞬時に見分けるのは、簡単ではありません。つい癖で「なぜだ」と言いたくなるのが、人間です。

まずは今日、誰かの言動に違和感を覚えた瞬間、「なぜ」と口にする前に、心の中で一呼吸だけ置いてみてください。それだけで、次に出てくる言葉が、少し変わってくるはずです。

もつれた糸は、無理に引っ張るほど結び目が固くなります。次回は、その先——掘るのをやめたあと、どこから前に進めばいいのか、という話をしたいと思います。

この記事を書いた人

阿部 真也代表取締役/中小企業診断士

全国の中小企業の経営改善・事業再生を支援。実行段階では、経営者の自発的な力を引き出す独自の「自発型伴走支援」に力を入れている。

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