「これまでどおり、事業計画書も私が作成し、提出まで担当します」——行政書士の先生から、経営・管理ビザの依頼者についてそう伺うことがあります。それで間違いではありません。ただ、2025年10月の改正で、そこにもう一つ、別の専門家の役割が加わりました。今日は、その理由の話をします。
経営・管理ビザは近年、実態のない会社を設立して在留資格だけを得る例が増え、社会的な問題として指摘されてきました。これを受けて、資本金3,000万円以上、常勤職員1人以上、経営・管理に関する一定の経歴、日本語能力といった基準が引き上げられると同時に、事業計画書についても、具体性・合理性・実現可能性が認められるかどうかを、中小企業診断士・公認会計士・税理士のいずれかが確認することが義務づけられました。書類の形式が整っているだけでは足りず、計画の中身そのものに専門家の目を通すという発想が加わったということです。
行政書士の先生は、申請書類を整え、要件に沿って過不足なく提出する専門家です。一方で、事業計画の数字が妥当かどうか、実際に実行できる計画かどうかを見極めるのは、日頃から財務や経営計画に向き合っている専門家の領域です。今回の改正は、この2つの専門性を切り分けて、両方を揃えることを求めるものだと捉えると分かりやすくなります。どちらが欠けても、審査を通る申請にはならないということです。
この役割分担は、手間が二つに増えるという話ではありません。これまで申請全体のなかで見えにくかった「計画の中身が妥当かどうか」という部分に、財務の専門家の目が入るということです。行政書士の先生には申請書類の実務に、財務の専門家には計画の評価に、それぞれ集中してもらう。そう分かれることで、申請全体の精度が上がります。
対象になるのは、債務超過の有無にかかわらず、原則としてすべての新規申請です(上場企業に相当する規模の場合等は除きます)。「うちはまだ経営が安定しているから関係ない」とは言い切れない制度だという点は、押さえておく必要があります。
もう一つ、知っておいていただきたい点があります。入管の資料は、中小企業診断士等の確認を義務づける記載のすぐ後に、「弁護士及び行政書士以外の方が、官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがある」と明示しています。事業計画書は、申請の添付書類にあたり得るものです。だからこそ、私たちは事業計画書そのものの作成は行わず、評価に徹しています。計画の作成は依頼者ご自身か、行政書士の先生にお願いする形になります。
役割が分かれているのは、不便さではありません。それぞれの専門性が、正しい持ち場で働くための線引きです。
依頼者から見ると、窓口は一つ増えます。行政書士の先生が申請書類一式を整える一方で、事業計画については別途、財務の専門家が資料とヒアリングをもとに評価書をまとめる、という2本立ての流れです。それぞれが専門領域に集中することで、計画の中身も、書類の体裁も、双方の精度が上がります。
進める順番としては、まず事業計画の骨子と数字をある程度固め、その段階で財務の専門家に評価を依頼するのが動きやすい流れです。計画が固まりきる前に評価だけを先行させても、その後の修正で評価をやり直すことになりかねません。
行政書士の先生にご依頼中の方は、事業計画の評価を誰に依頼するかを、申請の準備と並行して早めに確認しておくことをおすすめします。評価書の作成には日数がかかるため、提出期限からの逆算が安心につながります。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
評価書の作成のご依頼は、経営管理ビザの評価書のページで承っています(料金とご依頼の流れを掲載しています)。
経営管理ビザの新規の申請では、事業計画書を用意します。けれども、出入国在留管理庁の案内には、決まった様式が示されていません。何を、どこまで書けばよいのか——書き始められずにいる方もいると思います。今日は、事業計画書を誰が書くのか、2025年10月に何が変わったのかを整理したうえで、書くべき要素を5W2Hの7つの問いで押さえます。
最初に、役割を分けておきます。事業計画書は、申請に添えて出入国在留管理庁に提出する書類で、申請する側が用意します。
出入国在留管理庁は、改正の案内のなかで「弁護士及び行政書士以外の方が、官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがあります」と注意を促しています。このあと出てくる中小企業診断士・公認会計士・税理士は、用意された計画を確認し、評価する側です。
2025年10月16日に施行された改正で、在留資格を決めるとき(新規の申請や、ほかの在留資格からの変更など)に出す事業計画書は、経営に関する専門的な知識を有する者の確認を受けることになりました(上場企業に相当する規模の場合などは、この確認の対象から除かれています)。出入国在留管理庁の案内では、施行日の時点で該当する者として中小企業診断士・公認会計士・税理士が挙げられています。
このように、事業計画書を読むのは、評価する専門家と、最後に審査する出入国在留管理庁です。このシリーズでは、この人たちをまとめて「読む人」と呼びます。
なお、この評価を受けた書面についても、出入国在留管理庁の案内には、決まった名前や様式は示されていません。私たちは「事業計画評価書」と呼んでいますが、決まった名前ではありません。中身は「事業計画書を、次の3つの観点で評価したもの」です。
出入国在留管理庁の案内では、計画に具体性と合理性が認められ、実現可能なものであることを評価する、とされています。3つの言葉を、私たちなりに短く言い換えておきます。
事業計画書に書く項目は、法令で決まっているわけではありません。どんな順番で、どんな見出しで書くかは、事業によって変わってかまいません。ただ、どの事業計画書にも欠かせない要素はあります。それを確かめるのに便利なのが、仕事の場面で使われる「5W2H」の7つの問いです。
7つの問いに答えがそろっていれば、先ほどの3つの観点に答える材料も、おおむねそろいます。この言い換えで見ると、Why・What・Who・Where・When・How は主に具体性に、When と How much は主に合理性に、Who・Where・How・How much は主に実現可能性にかかわります。反対に、答えられない問いがあれば、そこが計画書の抜けているところです。
違いは、同じ事業を2通りに書いてみると分かります。
足りない書き方——「新しい事業で、売上を伸ばします。」
伝わる書き方——「日本で働く外国人に向けて、仕事で使う日本語の教室を開きます。開業から1年は、つながりのある3社の社員を中心に、月20人の受講を見込みます。授業は、経営者と、日本語教師の経験がある常勤の講師1名で行います。」
後者には、何を・誰に・どのように(具体性)、見込みの数字とその出どころ(合理性)、それを行う人(実現可能性)が、短い文のなかにそろっています。
読む人が見るのは、文章のうまさではありません。7つの問いの一つひとつに、根拠のある答えが書かれているかどうかです。
手元に計画書の下書きやメモがあれば、7つの問いに、それぞれ1行ずつで答えてみてください。まだ何もなければ、白い紙に7つの問いを書くところからで十分です。すぐに答えられる問いと、手が止まる問いが分かれるはずです。手が止まった問いが、これから時間をかけるところです。
次回からは、この7つの問いを1つずつ取り上げて、何を考えておけばよいかを見ていきます。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
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