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月次決算が「遅い」──後編:請求書が遅い相手と、速報・確報の使い方【月次決算②】

前編では、月次決算が遅れる理由と、「正確さは譲らない。譲るのは、全部そろうまで待つこと」という考え方をお話ししました。後編の今日は、その考え方を実際の仕組みに落とします。速報と確報の二段階、締め切りの決め方、そして請求書が遅れがちな取引先とのルールづくり——三つの手立てを、順に見ていきます。

「速報」と「確報」、二段階に分けるという手もある

まず一つめ。実務でよく採られるのが、締めを一度で終わらせず、「速報」と「確報」の二段階に分けるやり方です。

期日で締めたところまでの数字を、まず速報として出す。社長はこれを見て、その月の手を打ちます。そのあと、遅れて届いた資料を反映した確報を出して、帳簿を確定させる。こうすれば、経営判断の速さと、会計数値の正確さを、どちらも手放さずに済みます。

前編でお話しした「遅れた分は翌月にまわす」形と、どちらが向いているか。遅れて届くものが少額で数も限られているなら、翌月にまわすほうが手間なく回ります。反対に、金額が大きい、毎月まとまって遅れるという会社なら、二段階のほうが、その月の実態を素直に映せます。どちらで回すかを、あらかじめ会計事務所と決めておく——決めていないから、毎月「待つか、出すか」で迷い、結局は待つほうに倒れてしまいます。

締め切りを「先に」決めてしまう

二つめ。遅れをなくす、いちばん実際的な方法は、順番を逆にすることです。資料がそろってから作るのではなく、「翌月の何日までに出す」と締め切りを先に決めてしまう。

たとえば「翌月十日で締めて、試算表を出す」と決める。すると、それに間に合うように、資料の集め方や記帳のタイミングが自然と整っていきます。締め切りが、仕組みを引っぱってくれるのです。会計事務所に頼んでいるなら、「毎月十日でいったん締めて、そこまでの数字で出してほしい」と伝えるだけでも、流れは変わります。

締め切りを決めるときのコツは、「間に合わなかった分は翌月にまわす」を、先に合意しておくことです。ここを決めておかないと、締め切りだけがあって、結局は「そろってから」に戻ってしまいます。

請求書が遅い相手には、相談してルールを決める

三つめ。ここまでは自社の中の話でしたが、締めが遅れる原因が、社外にあることも多いのです。

もう一歩踏み込むなら、請求書を出すのが遅い仕入先や外注先に、早めに出してもらえないか相談してみることです。毎月遅れてくる相手は、たいてい決まっています。「毎月◯日までにいただけると助かります」と一度お願いするだけで、変わることも少なくありません。

そのうえで、ルールとして決めてしまうのも一つです。「◯日を過ぎて届いた請求書は、翌月分として扱う。したがって、お支払いもひと月先になる」——こう決めておけば、締めが遅れることはなくなりますし、相手にとっても早く出す理由になります。取引条件に関わる話ですから、決めたら必ず事前にお伝えして、了解をいただいたうえで運用します。

ただし、ルールそのものの作り方には、十分な留意が要ります。取引先が中小事業者にあたる場合、代金の支払期日は取適法(中小受託取引適正化法。2026年1月に下請法から改正されました)の定めを受けます。請求書が遅れたことを理由に、支払いそのものを後ろへ倒す形にすると、支払遅延と受け取られるおそれがあります。社内の締め処理をどこで区切るかという話と、いつ支払うかという話は、必ず分けて考える。ルールを決める前に取適法の内容を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

早く出た数字は、業務を直すために使う

ここまで仕組みの話をしてきましたが、早く出すこと自体が目的ではありません。早く出た数字は、業務を直すための材料です。「今月は粗利が薄い」と翌月の十日に分かれば、まだその月の仕事が動いているうちに、原因を現場に確かめにいけます。値引きが増えていたのか、材料が上がっていたのか、手間のかかる仕事が増えていたのか——。

そこまで下りて、はじめて手が打てます。数字の増減は結果であって、直すのはいつも、その裏にある業務です。締めを早めるというのは、その業務に手を入れる時間を、自分たちのために取り戻すということでもあります。

まとめ──今日できる一歩

まずは、「翌月◯日で締める」——この期日を、一つ決めてみてください。そのうえで、間に合わなかった分を翌月にまわすのか、速報と確報の二段階にするのか。どちらでもかまいません。処理の正確さはそのままに、区切る場所を決めるだけです。それだけで、数字は「過去の記録」から「今、手を打つための道具」に変わります。

三つとも一度にやる必要はありません。ひとつ決めれば、残りは後からついてきます。

次回は、数字は毎月きちんと出ているのに、なぜか「見ていない」——その、もう一つの落とし穴の話をします。

本記事は一般的な考え方の紹介です。取適法をはじめ取引条件に関わる具体的な判断は、公正取引委員会・中小企業庁の公表資料や、弁護士などの専門家にご確認ください。

「早く出すと決めたけれど、何から仕組みを変えればいいのか」——そこが見えにくいときは、業務改善・経営改善のご相談で、月次が回る形をご一緒に組み立てられます。

月次決算が「遅い」──前編:翌々月では、もう手が打てない【月次決算②】

毎月、試算表は出るようになった。けれど、手元に届くのは、その月が終わって二か月、三か月あと——。四月の数字を見るのが七月、ということも、めずらしくありません。せっかく毎月締めているのに、届くころには、もう次の季節になっている。これは、とてももったいない状態です。

前回は、「毎月、会社の数字が出てくる状態」を作る話をしました。今日はその続き。数字は出ているけれど「遅い」——この落とし穴を、前後編に分けてお話しします。前編の今日は、なぜ遅れるのか、そして早めるときに何を譲ってはいけないのか。後編で、具体的な仕組みに落とします。

数字は、早く出るほど値打ちがある

前回、月次決算の値打ちは「傷が浅いうちに気づけること」だとお話ししました。ところが、数字が遅れて届くと、その値打ちはまるごと薄れてしまいます。三か月前の落ち込みを今ごろ知っても、打てる手は限られている。それは、年に一度の決算書を待っているのと、あまり変わりません。同じ試算表でも、翌月の早いうちに手元にあるか、二か月遅れて届くかで、値打ちはまるで違います。数字は、鮮度がものを言います。

二か月遅れの数字で舵を取ると、何が起きるか

車を運転していて、カーブに差し掛かってからハンドルを切ったのでは、もう遅い——そういう場面があります。会社の数字も同じで、傾きに気づいたときには、すでに二か月分、そのまま走り続けてしまっている。舵を取るタイミングそのものが、遅れているということです。

もう少し具体に見てみます。四月に粗利が落ちていたとして、それを知るのが七月だとしたら——五月も六月も、落ちたままの状態で走り続けたことになります。気づかなかった二か月分は、そのまま積み上がっています。

資金繰りにも効いてきます。「利益は出ているはずだ」と思って走っていたら、実は二か月前から赤字だった。手元のお金が思ったより減っていることに、あとから気づく。そのときにはもう、打てる手が金策のほうへ寄っていきます。早く気づけていれば、まだ改善のほうに手を回せたはずの局面です。

そして、いちばん厄介なのがこれです。遅い数字は、現場に問いかけられません。七月に「四月の粗利が薄いのはなぜか」と聞いても、現場の記憶はもう薄れています。「そういえば、あのころは忙しかったですね」で終わってしまう。数字が早ければ、記憶が新しいうちに、原因を一緒に確かめにいけます。

なぜ、月次決算は遅れてしまうのか

「早く出したいのはやまやまだ」——そう思っておられるはずです。それでも遅れてしまうのには、たいてい、いくつかの決まった理由があります。

どれも、いい加減にしているわけではありません。むしろ「きちんとやろう」とするからこそ、遅れる。ここに、月次決算の少し皮肉なところがあります。

正確さは譲らない。譲るのは「全部そろうまで待つこと」

ここは、はっきりさせておきたいところです。会社の会計数値は、正確さが命です。だいたいでいい、という話では決してありません。一つひとつの処理は、これまでどおりきちんと合わせます。

変えるのは、精度ではなく「どこまで待つか」の線引きです。月末を過ぎても、請求書や領収書は少しずつ遅れて届きます。その最後の一枚を待ち続けるから、締めが翌々月にずれ込む。そうではなく、決めた期日でいったん締め処理を終わらせ、そのあとに届いたものは翌月分として処理する。正確さはそのままに、区切る場所だけを先に決める、ということです。目安としては、月末から15日前後、できれば10営業日以内での締めを目指したいところです。

多くの場合、待っているのは全体のごく一部にすぎません。その一部のために、会社の数字全体が二か月遅れる——ここが、いちばんもったいないところです。年に一度の決算では、どの月の費用として扱うかまで含めて、きちんと整えます。毎月の締めは、その手前で経営の舵を取るためのものです。

まとめ──今日できる一歩

まずは、自社の数字が、月末から何日で手元に届いているかを数えてみてください。十日なのか、四十日なのか、六十日なのか。数えるだけで十分です。そこが、いまの立ち位置になります。

そのうえで、覚えておいていただきたいのは一つだけです。正確さは譲らない。譲るのは、全部そろうまで待つこと。丁寧に合わせようと頑張っている会社ほど、締めは遅れがちです。その丁寧さはそのままに、待つのをやめる——そこから始まります。

次回の後編では、そのための具体的な手立てを三つ。「速報」と「確報」の二段階、締め切りの決め方、そして請求書が遅れがちな取引先とのルールづくりの話をします。

月次決算を「行っていない」——経営管理は、まず“毎月の数字”から【月次決算①】

決算は、年に一度、税理士さんにお任せしている。毎月の試算表までは、正直、作れていない——。特に規模の小さい会社では、めずらしくないことだと思います。日々の商売で手一杯のなか、毎月きちんと数字を締めるのは、そう簡単ではありません。

今日から数回に分けて、「月次決算」の話をします。経営を数字で管理する——その一番の土台になるものです。第一回の今日は、いちばん最初の一歩。「毎月、会社の数字が出てくる状態」を作る話です。難しく考える必要はありません。

年に一度の決算だけでは、なぜ間に合わないのか

決算書は、一年が終わったあとに出てくる“答え合わせ”です。そこで「去年は苦しかった」と分かっても、打てる手はもう限られています。一年分をまとめて振り返るのは、車でいえば、目的地に着いてから地図を広げるようなもの。走っている最中に見られなければ、道は直せません。

毎月、数字が出ていれば、「今月は少し落ちたな」という段階で気づけます。傷が浅いうちに、手を打てる。これが、月次決算のいちばんの値打ちです。

まずは「毎月、試算表が出てくる」——この状態を作る

月次決算というと難しく聞こえますが、最初の目標はシンプルです。毎月、その月の試算表が出てくる状態を作ること。まずは、ここだけで十分です。中身を細かく見ていくのは、その次の段階でかまいません。

ぜんぶ自分でやろうとしなくていい

「そんな余裕はない」と感じるかもしれません。でも、すべてを自分や自社で抱える必要はないのです。手立ては、いくつもあります。

大事なのは、「毎月、数字が出てくる仕組み」を、無理のない形で用意すること。社長自身が手を動かすことではありません。

数字は、年に一度の通知表ではなく、毎月の“相談相手”

毎月の試算表が手元にあると、数字との付き合い方が変わります。年に一度、良し悪しを告げられる通知表ではなく、「今月はどうだった?」と毎月語りかけられる相談相手になる。その積み重ねが、勘だけに頼らない経営への、最初の一歩です。

まとめ──今日できる一歩

まずは、顧問の税理士さんや会計事務所に、「毎月、試算表を出してもらえますか」と相談してみてください。もし今は頼む先がなければ、クラウド会計を一つ調べてみるだけでもいい。「毎月、数字が見える」——その状態を作ると決めることが、経営管理のスタートです。完璧でなくて大丈夫。まずは、始めることから。

次回は、月次決算をやってはいるけれど「遅い」——その落とし穴の話をします。

「毎月の数字を、どう経営に活かせばいいか」——そこから先は、経営改善のご相談でご一緒に考えていけます。