経費を削っても、赤字が止まらない——。そんなときは、削る場所を探す前に、「どこにムダがあるのか」を一度立ち止まって見てみる方が、かえって早いことがあります。損益計算書を眺めているだけでは、本当の原因はなかなか見えてこないものです。
赤字の原因は、「会社全体の数字」では見えない
「なんとなく人件費が重い」「材料費が上がったせいだ」——そんな印象だけで手を打つと、効く場所を外してしまいます。
損益計算書は、あくまで会社全体を集計した“結果”です。どの商品で、どの得意先で、どの営業所で損が出ているのかまでは、そのままでは見えません。だからこそ、細かく分解して見ていく必要があります。
① セグメントに分けて見る(商品・得意先・営業所)
まずは、赤字を「会社全体」でひとくくりにするのをやめて、単位ごとに分けてみます。
- 商品・サービスごとに、利益が出ているか
- 得意先ごとに、取引の採算はどうか
- 営業所・部門ごとに、どこが稼ぎ、どこが落ち込んでいるか
分けてみると、好調な商品の陰に隠れていた赤字の商品や、実は利益が出ていない得意先や部門が、はっきり姿を現すことがあります。「どこで損しているか」が見えれば、打ち手はぐっと絞り込めます。
② 時間軸で比べる(前年比・前月比)
もう一つの見方が、時間で比べることです。同じ数字でも、一時点だけを見るのと、流れで見るのとでは、伝わってくることが変わります。
前年の同月と比べる。前月と比べる。去年は利益が出ていた商品が今年は赤字、この数か月で急に原価が膨らんでいる——そうした“変化”が、原因のありかを教えてくれます。「いつから、どう変わったのか」をたどるのが、原因を探す近道です。
損益計算書だけでなく、貸借対照表も見る
赤字というと損益計算書の話だと思いがちですが、会社の財産と借金の一覧である貸借対照表にも、資金の減少要因が表れます。とくに注意して見たいのが、売掛金・在庫・買掛金の3つです。
- 売掛金が増えている → 売上が増加して現金化されていない分が増えている、あるいは回収が滞っている売掛が発生している
- 在庫が増えている → 仕入れで払ったお金が、モノの形で寝ている
- 買掛金が減っている → 支払が増え、お金が流出している
ただし、こうした数字の動きは、読み方が一つとは限りません。たとえば買掛金の裏では、仕入そのものが増えて在庫に積み上がっていたり、仕入の金額の割に利益が出ていない——つまり安売りになっている、ということもあります。数字だけで決めつけず、その裏にある業務まで確かめることが大切です。いずれにせよ、これらは損益計算書の利益には表れなくても、手元の資金を減少させます。「利益は出ているはずなのに、なぜか苦しい」の答えが、ここに隠れていることは少なくありません。
見えてきたムダは、業務のなかで止める
どこで損しているかが見えたら、次は、その原因を業務のなかに探します。よくあるのは、次の3つです。
- 作りすぎ:売れる以上に作る・仕入れる。在庫という形で、お金が寝てしまう。
- 待ち:前の工程待ち、承認待ち、材料待ち。止まっている間もコストは出ていく。
- 手戻り:ミス、やり直し、二度手間。一度で終わっていれば要らなかった時間とお金。
売上を増やして取り返すのは、時間がかかり、忙しさも増えます。一方、ムダを一つ止めるのは今日からでき、そのまま利益に効きます。
業務のムダを直すことは、意外と赤字の削減に効果があることもあります。派手さはありませんが、一つ止めるごとに、毎月手元に残るお金は変わってくることもあります。
まずは、ひとつ分けて、比べてみる
まずは、いちばん気になる商品か得意先をひとつ選んで、その利益を「前の年」と並べてみてください。会社全体では見えなかったものが、分解して比較すると、見えてきます。そこが、立て直しの出発点です。
「どこから手をつければいいか分からない」と感じたら、数字を分けて見るところから、一緒に始められます。赤字の“隠れ場所”を、ご一緒に探します。