「評価書を用意してください」——入管や行政書士の先生からそう言われて、何を指しているのか分からず戸惑った方は少なくないはずです。経営・管理ビザの「評価書」は、実は一つではありません。今日は、新規の申請と更新の申請で、まったく別の書面が求められているという話をします。
新規は「事業計画評価書」——見られるのは具体性・合理性・実現可能性
2025年10月の改正で、在留資格「経営・管理」を新しく取得する際に提出する事業計画書について、専門家の確認が義務付けられました。ここで作成されるのが「事業計画評価書」です。
評価の対象は、事業計画に具体性・合理性・実現可能性が認められるかどうかの3点です。何を、誰に、どのように提供するのか。売上や経費の前提に無理はないか。その計画を実行できる体制になっているか。確認できるのは、中小企業診断士・公認会計士・税理士の3資格です(上場企業相当規模の場合等は対象外とされています)。
この3つは、言い換えると「中身があるか」「筋が通っているか」「絵に描いた餅で終わらないか」ということです。売上目標だけがあって、誰にどう売るのかが書かれていない計画。前年比で毎年二桁成長を見込みながら、その根拠が示されていない計画。こうした計画は、具体性や合理性の面で評価が難しくなります。
更新は「事業継続性評価書」——問われるのは1年以内に立て直せるかどうか
一方、すでに経営・管理ビザで在留している方が更新申請を行う際に必要になり得るのが「事業継続性評価書」です。直近二期の決算をもとに、事業を続けていけるかどうか(事業の継続性)が審査されます。
欠損金も債務超過もなければ、原則として問題はないとされています。欠損金はあるが債務超過ではない場合は、今後1年間の事業計画と予想収益で足りることが多いとされます。ここで評価書がはっきりと必要になるのは、直近期末が債務超過のときです。
ここで評価するのは、1年以内に債務超過の状態を解消できる見通しがあるかどうかです。単に「大丈夫です」と結論だけを書いた書面では足りません。その見通しを裏づける、評価の根拠となる理由の記載が求められます。なお、2期連続で債務超過が続いている場合や、2期連続で本業の利益(売上総利益)が出ていない場合は、原則として継続性は認められにくく、設立5年以内の新興企業に限り、別の書類とあわせた特例が用意されています。
新規は「これから始める計画」を、更新は「すでに苦しい状況からの立て直し」を評価する——名前だけでなく、見られている中身がまったく違います。
なぜ、こんなに違うのか
理由は、会社が置かれている局面が違うからです。新規は、これから経営を始める人の計画性を確かめる場面。更新は、実際に経営してきた会社が、苦しい状況をどう立て直すのかを確かめる場面です。前者は絵に描いた計画で終わらないかを見極め、後者は本当に立て直せるのかを見極める。評価の視点が違えば、求められる書面も自然と別のものになります。
もう一つ、細かいけれど見過ごせない違いがあります。新規の要件には「第三者」という言葉が使われていません。求められているのは、あくまで「経営に関する専門的な知識を有する者」の確認です。一方、更新の要件には、この「第三者」という言葉が明記されています。
「第三者」とは、一般に、評価する対象から独立した、利害関係のない立場を指す言葉です。似た外国人材の制度(育成就労)では、「顧問契約を結んでいる専門家は評価者として適切ではない」という趣旨が、運用要領に明文で定められています。ただし経営・管理ビザの一次資料には、この点を定めた条文は見当たりません。更新の評価書を、御社の顧問税理士や顧問診断士に依頼できるかどうかは、条文からは断定できないというのが正確なところです。
判断が分かれ得る以上、更新の評価書は、顧問関係のない独立した専門家に依頼するのが安全です。迷う場合は、依頼を検討している専門家、または入管に直接確認することをおすすめします。
誰に相談すればよいのか
評価書を作成できるのは中小企業診断士・公認会計士・税理士のいずれかです。行政書士の先生は申請書類の作成・提出を担う専門家であり、評価書そのものの作成はできません。役割が分かれているだけで、どちらも欠かせない専門家です。
数ある選択肢の中でどこに頼むか迷ったときは、日頃どんな仕事をしている事務所かを見てみてください。金融機関に説明する事業計画や、経営改善の計画を日常的に作っている事務所であれば、「具体性・合理性・実現可能性」や「1年以内に立て直せる根拠」を、実務の感覚で見極めやすいはずです。
まとめ──今日できる一歩
更新をお考えの方は、まず直近期末の決算で債務超過に当たるかどうかを確かめてみてください。新規で申請する方は、事業計画の数字に、その根拠となる説明がきちんと添えられているかを、一度見直すことから始められます。どちらも、専門家に相談する前に、ご自身で確かめられる一歩です。行政書士の先生にご依頼中の方は、その点を一度共有してみてください。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
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