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資金繰り・経営改善 2026年8月24日

月次決算が「遅い」──後編:請求書が遅い相手と、速報・確報の使い方【月次決算②】

前編では、月次決算が遅れる理由と、「正確さは譲らない。譲るのは、全部そろうまで待つこと」という考え方をお話ししました。後編の今日は、その考え方を実際の仕組みに落とします。速報と確報の二段階、締め切りの決め方、そして請求書が遅れがちな取引先とのルールづくり——三つの手立てを、順に見ていきます。

「速報」と「確報」、二段階に分けるという手もある

まず一つめ。実務でよく採られるのが、締めを一度で終わらせず、「速報」と「確報」の二段階に分けるやり方です。

期日で締めたところまでの数字を、まず速報として出す。社長はこれを見て、その月の手を打ちます。そのあと、遅れて届いた資料を反映した確報を出して、帳簿を確定させる。こうすれば、経営判断の速さと、会計数値の正確さを、どちらも手放さずに済みます。

前編でお話しした「遅れた分は翌月にまわす」形と、どちらが向いているか。遅れて届くものが少額で数も限られているなら、翌月にまわすほうが手間なく回ります。反対に、金額が大きい、毎月まとまって遅れるという会社なら、二段階のほうが、その月の実態を素直に映せます。どちらで回すかを、あらかじめ会計事務所と決めておく——決めていないから、毎月「待つか、出すか」で迷い、結局は待つほうに倒れてしまいます。

締め切りを「先に」決めてしまう

二つめ。遅れをなくす、いちばん実際的な方法は、順番を逆にすることです。資料がそろってから作るのではなく、「翌月の何日までに出す」と締め切りを先に決めてしまう。

たとえば「翌月十日で締めて、試算表を出す」と決める。すると、それに間に合うように、資料の集め方や記帳のタイミングが自然と整っていきます。締め切りが、仕組みを引っぱってくれるのです。会計事務所に頼んでいるなら、「毎月十日でいったん締めて、そこまでの数字で出してほしい」と伝えるだけでも、流れは変わります。

締め切りを決めるときのコツは、「間に合わなかった分は翌月にまわす」を、先に合意しておくことです。ここを決めておかないと、締め切りだけがあって、結局は「そろってから」に戻ってしまいます。

請求書が遅い相手には、相談してルールを決める

三つめ。ここまでは自社の中の話でしたが、締めが遅れる原因が、社外にあることも多いのです。

もう一歩踏み込むなら、請求書を出すのが遅い仕入先や外注先に、早めに出してもらえないか相談してみることです。毎月遅れてくる相手は、たいてい決まっています。「毎月◯日までにいただけると助かります」と一度お願いするだけで、変わることも少なくありません。

そのうえで、ルールとして決めてしまうのも一つです。「◯日を過ぎて届いた請求書は、翌月分として扱う。したがって、お支払いもひと月先になる」——こう決めておけば、締めが遅れることはなくなりますし、相手にとっても早く出す理由になります。取引条件に関わる話ですから、決めたら必ず事前にお伝えして、了解をいただいたうえで運用します。

ただし、ルールそのものの作り方には、十分な留意が要ります。取引先が中小事業者にあたる場合、代金の支払期日は取適法(中小受託取引適正化法。2026年1月に下請法から改正されました)の定めを受けます。請求書が遅れたことを理由に、支払いそのものを後ろへ倒す形にすると、支払遅延と受け取られるおそれがあります。社内の締め処理をどこで区切るかという話と、いつ支払うかという話は、必ず分けて考える。ルールを決める前に取適法の内容を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

早く出た数字は、業務を直すために使う

ここまで仕組みの話をしてきましたが、早く出すこと自体が目的ではありません。早く出た数字は、業務を直すための材料です。「今月は粗利が薄い」と翌月の十日に分かれば、まだその月の仕事が動いているうちに、原因を現場に確かめにいけます。値引きが増えていたのか、材料が上がっていたのか、手間のかかる仕事が増えていたのか——。

そこまで下りて、はじめて手が打てます。数字の増減は結果であって、直すのはいつも、その裏にある業務です。締めを早めるというのは、その業務に手を入れる時間を、自分たちのために取り戻すということでもあります。

まとめ──今日できる一歩

まずは、「翌月◯日で締める」——この期日を、一つ決めてみてください。そのうえで、間に合わなかった分を翌月にまわすのか、速報と確報の二段階にするのか。どちらでもかまいません。処理の正確さはそのままに、区切る場所を決めるだけです。それだけで、数字は「過去の記録」から「今、手を打つための道具」に変わります。

三つとも一度にやる必要はありません。ひとつ決めれば、残りは後からついてきます。

次回は、数字は毎月きちんと出ているのに、なぜか「見ていない」——その、もう一つの落とし穴の話をします。

本記事は一般的な考え方の紹介です。取適法をはじめ取引条件に関わる具体的な判断は、公正取引委員会・中小企業庁の公表資料や、弁護士などの専門家にご確認ください。

「早く出すと決めたけれど、何から仕組みを変えればいいのか」——そこが見えにくいときは、業務改善・経営改善のご相談で、月次が回る形をご一緒に組み立てられます。

この記事を書いた人

阿部 真也代表取締役/中小企業診断士

全国の中小企業の経営改善・事業再生を支援。実行段階では、経営者の自発的な力を引き出す独自の「自発型伴走支援」に力を入れている。

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