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資金繰り・経営改善 2026年9月7日

月次決算を「分析していない」——数字の”なぜ”を三回、掘ってみる【月次決算④】

毎月、数字は出ている。ちゃんと見てもいる。それなのに、「で、どうすればいいのか」までは、なかなかたどり着けない——。月次決算のシリーズも、今日で最終回です。見た数字から「なぜそうなったのか」を掘り当てる、分析の話をします。難しい手法は使いません。やることは、分けて、比べて、「なぜ」を三回問う。それだけです。

「利益が落ちた」は、症状であって原因ではない

試算表を見て「今月は利益が薄いな」と気づく。ここまでは、前回までで届く場所です。ただ、これは熱や咳と同じで、表に出ている症状にすぎません。熱があると分かっても、風邪なのか、別の不調なのかが分からなければ、飲む薬は決められません。

分析というのは、この症状の下にある不調を探す作業です。会社全体の数字を眺めているかぎり、見えるのは症状までです。原因は、もう一段か二段、下りたところにあります。

まず、分けて比べる

下りるための一番の道具が、分解して比較することです。会社全体の売上や利益は、いろいろなものが混ざった平均値です。混ざったままでは、良いところと悪いところが打ち消し合って、どちらも見えなくなります。

分け方は、難しく考えなくて大丈夫です。よく効くのは、この4つ。

全部やる必要はありません。まずは一つ、いちばん気になる切り口で分けてみる。それだけで、「全体では横ばい」に見えていたものの中に、伸びている山と落ちている谷があることが見えてきます。

意外なものが出てくるのは、得意先で分けたときです。売上のいちばん大きい先が、手間や値引きを差し引くと、実はほとんど利益を残していない——ということは、決してめずらしくありません。付き合いが長いほど、条件を見直さないまま来ていることもあります。分けてみるまでは、全体の数字の中に隠れて、誰にも見えていません。

「なぜ」を三回、掘ってみる

分けて谷が見つかったら、そこから「なぜ」を繰り返します。一度で止めないのが、コツです。

たとえば——「A商品の利益が薄い。なぜか」。値引きが増えていた。「では、なぜ値引きが増えたのか」。競合が増えて、価格を合わせにいっていた。「では、なぜ価格でしか勝負できなくなったのか」。納期でも品質でも、差がつかなくなっていた——。

ここまで下りて、ようやく手を打てる場所に着きます。一段目で止まれば「値引きを減らそう」という号令になり、たいてい現場が困ります。三段下りれば、「納期で差をつけられないか」という、具体的な仕事の話になります。掘る深さが、打ち手の質を決めます。

「なぜ」を一度でやめると、対策は号令になります。三回掘ると、対策は仕事になります。

掘り当てた根っこは、たいてい業務のなかにある

三回掘っていくと、行き着く先は、ほとんどの場合業務の中です。段取りが決まっていない、必要な情報が一人に貼りついている、同じことを二度入力している、判断が社長のところで詰まっている——。数字の落ち込みは結果であって、直す場所は、いつもそこにあります。

逆にいえば、業務に手を入れないかぎり、来月もまた同じ数字が出てきます。分析は、犯人を探すためではなく、直す場所を決めるためにやるものです。ですから、掘り当てたら「では、明日から何を変えるか」まで持っていく。そこまでが分析です。

まとめ──今日できる一歩

まずは、いちばん気になっている数字を一つ選んで、直近12か月ぶんを横に並べてみてください。グラフにしなくても、紙に書き出すだけで十分です。そのうえで、前の年の同じ月と見比べてみる。並べた瞬間に、「去年の秋から落ちてきている」といった具合に、これまで平均に隠れていたものが姿を見せます。そこが、掘りはじめる場所です。

四回にわたって、月次決算の話をしてきました。始める、早く出す、見る、そして掘る——。ひとつずつでかまいません。毎月の数字が、通知表から相談相手に変わったとき、経営の景色は確かに変わります。まずは今月の試算表を、もう一度開くところから。

「どこから分ければいいのか、掘った先をどう直せばいいのか」——その道筋が見えにくいときは、業務改善・経営改善のご相談で、数字と現場を行き来しながらご一緒に整理できます。

この記事を書いた人

阿部 真也代表取締役/中小企業診断士

全国の中小企業の経営改善・事業再生を支援。実行段階では、経営者の自発的な力を引き出す独自の「自発型伴走支援」に力を入れている。

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