毎月、数字は出ている。ちゃんと見てもいる。それなのに、「で、どうすればいいのか」までは、なかなかたどり着けない——。月次決算のシリーズも、今日で最終回です。見た数字から「なぜそうなったのか」を掘り当てる、分析の話をします。難しい手法は使いません。やることは、分けて、比べて、「なぜ」を三回問う。それだけです。
「利益が落ちた」は、症状であって原因ではない
試算表を見て「今月は利益が薄いな」と気づく。ここまでは、前回までで届く場所です。ただ、これは熱や咳と同じで、表に出ている症状にすぎません。熱があると分かっても、風邪なのか、別の不調なのかが分からなければ、飲む薬は決められません。
分析というのは、この症状の下にある不調を探す作業です。会社全体の数字を眺めているかぎり、見えるのは症状までです。原因は、もう一段か二段、下りたところにあります。
まず、分けて比べる
下りるための一番の道具が、分解して比較することです。会社全体の売上や利益は、いろいろなものが混ざった平均値です。混ざったままでは、良いところと悪いところが打ち消し合って、どちらも見えなくなります。
分け方は、難しく考えなくて大丈夫です。よく効くのは、この4つ。
- 時系列で比べる(前月比・前年比)——まず、いちばん手をつけやすい切り口です。前月と比べて直近の動きを、前年の同じ月と比べて季節の波を除いた実力を見る。今月の数字だけを眺めていては、そのどちらも分かりません。
- 部門で分ける——どの部門で利益が薄くなっているのか。会社全体では横ばいに見えても、部門ごとに並べると差がはっきり出ます。
- 商品・サービスで分ける——何が稼ぎ、何が稼げていないのか。
- 得意先で分ける——売上の大きい先が、利益も残しているとは限りません。
全部やる必要はありません。まずは一つ、いちばん気になる切り口で分けてみる。それだけで、「全体では横ばい」に見えていたものの中に、伸びている山と落ちている谷があることが見えてきます。
意外なものが出てくるのは、得意先で分けたときです。売上のいちばん大きい先が、手間や値引きを差し引くと、実はほとんど利益を残していない——ということは、決してめずらしくありません。付き合いが長いほど、条件を見直さないまま来ていることもあります。分けてみるまでは、全体の数字の中に隠れて、誰にも見えていません。
「なぜ」を三回、掘ってみる
分けて谷が見つかったら、そこから「なぜ」を繰り返します。一度で止めないのが、コツです。
たとえば——「A商品の利益が薄い。なぜか」。値引きが増えていた。「では、なぜ値引きが増えたのか」。競合が増えて、価格を合わせにいっていた。「では、なぜ価格でしか勝負できなくなったのか」。納期でも品質でも、差がつかなくなっていた——。
ここまで下りて、ようやく手を打てる場所に着きます。一段目で止まれば「値引きを減らそう」という号令になり、たいてい現場が困ります。三段下りれば、「納期で差をつけられないか」という、具体的な仕事の話になります。掘る深さが、打ち手の質を決めます。
「なぜ」を一度でやめると、対策は号令になります。三回掘ると、対策は仕事になります。
掘り当てた根っこは、たいてい業務のなかにある
三回掘っていくと、行き着く先は、ほとんどの場合業務の中です。段取りが決まっていない、必要な情報が一人に貼りついている、同じことを二度入力している、判断が社長のところで詰まっている——。数字の落ち込みは結果であって、直す場所は、いつもそこにあります。
逆にいえば、業務に手を入れないかぎり、来月もまた同じ数字が出てきます。分析は、犯人を探すためではなく、直す場所を決めるためにやるものです。ですから、掘り当てたら「では、明日から何を変えるか」まで持っていく。そこまでが分析です。
まとめ──今日できる一歩
まずは、いちばん気になっている数字を一つ選んで、直近12か月ぶんを横に並べてみてください。グラフにしなくても、紙に書き出すだけで十分です。そのうえで、前の年の同じ月と見比べてみる。並べた瞬間に、「去年の秋から落ちてきている」といった具合に、これまで平均に隠れていたものが姿を見せます。そこが、掘りはじめる場所です。
四回にわたって、月次決算の話をしてきました。始める、早く出す、見る、そして掘る——。ひとつずつでかまいません。毎月の数字が、通知表から相談相手に変わったとき、経営の景色は確かに変わります。まずは今月の試算表を、もう一度開くところから。
「どこから分ければいいのか、掘った先をどう直せばいいのか」——その道筋が見えにくいときは、業務改善・経営改善のご相談で、数字と現場を行き来しながらご一緒に整理できます。