前回まで、月次決算を「始める」「早く出す」話をしてきました。ですが——せっかく毎月、数字が早く出てきても、それを社長が見ていなければ、宝の持ち腐れです。実は、試算表を受け取っても、ざっと眺めるだけ、あるいは机の上に積んだまま、という方は少なくありません。今日は、その数字を「見る」習慣の話です。
数字は、見て、初めて意味を持つ
試算表は、作ることがゴールではありません。見て、気づいて、次の手を考える——そこまでいって、初めて経営の役に立ちます。とはいえ、「どこを見ればいいか分からない」「細かい数字は苦手だ」という声もよく聞きます。大丈夫です。毎月見るのは、たった3つで十分です。
もう一つ、あまり語られない理由があります。数字を見るのが、少しこわい——赤字が続いているときは、特にそうだと思います。開けば、うまくいっていない事実がそこにある。日々必死でやっているのに、それを突きつけられるようで、つい後回しになる。これは、いい加減さではなく、むしろ真剣に会社を背負っているからこそ起きることです。
ただ、見なかったからといって、数字が良くなることはありません。むしろ、早く見た人ほど、まだ打てる手が多く残っています。数字は、成績を告げにくるのではなく、次の一手の材料を持ってきてくれている——そう捉え直せると、開くときの重さが、少し軽くなります。
毎月見る、3つの数字
- ① 今月、利益はいくら残ったか——売上ではなく、最後に残った利益を見ます。
- ② お金は、増えたか減ったか——利益が出ていても、通帳が減っていることはあります。その差に気づく。
- ③ 見込みと、比べてどうか——「今月はこれくらい」の予想と照らして、ずれていないかを見る。
もう少しだけ、見方を足しておきます。①の利益は、金額そのものより先月・先々月と並べて見ると、流れが分かります。②のお金の増減は、通帳の月末の預金残高を三か月ぶん並べるだけで十分です。③の見込みは、立派な計画でなくてかまいません。「今月はこれくらいだろう」と月初に頭で思った数字を、メモに一行書いておく。それだけで、月末に比べられます。
この3つを、月に一度、5分でいいので眺める。それだけで、「なんとなく忙しいのに、なぜか残らない」の正体が、少しずつ言葉になってきます。数字は、責めるための道具ではありません。次の一手を決めるための、地図です。
「見る日」を、先に決めてしまう
見る習慣がつかないいちばんの理由は、「時間があったら見よう」と後回しにするからです。おすすめは、カレンダーに「数字を見る日」を先に書き込んでしまうこと。たとえば毎月20日の朝、30分。予定として押さえてしまえば、日々の忙しさに流されにくくなります。最初は数字を眺めるだけでも十分。続けるうちに、自然ともっと見たいところが出てきます。
ずれに気づいたら、業務のどこで起きたかを探す
3つを見ていると、そのうち「おかしいな」という月が出てきます。利益が薄い、思ったよりお金が減っている、見込みと大きくずれている——。そこで大事なのは、数字をにらんで悩むことではなく、そのずれが、業務のどこで起きたのかを探しにいくことです。
利益が薄ければ、値引きが増えたのか、材料や外注の単価が上がったのか、手のかかる仕事の割合が増えたのか。お金だけが減っているなら、回収が遅れているのか、在庫が積み上がっているのか。数字は「どこかで何かが起きた」と教えてくれるだけで、その中身は現場にしかありません。現場に聞きにいって、初めて直せる場所が見つかります。
この「見る → 現場で確かめる」を毎月繰り返せる会社は、強いです。特別なことをしているわけではなく、気づくのが早いだけ。その早さが一年積み重なると、決算の姿がはっきり変わってきます。
まとめ──今日できる一歩
まずは、いちばん新しい試算表を開いて、さきほどの3つ——利益・お金の増減・見込みとの差——を、5分だけ見てみてください。それだけで、来月の景色は少し変わります。数字を自分の言葉で語れるようになると、判断の迷いが減り、その姿は社員にも伝わっていきます。
次回(シリーズ最終回)は、数字を「見る」から一歩進んで、「分析する」——なぜそうなったのかを掘る話をします。
「毎月の数字は見るようになったけれど、ずれの原因が業務のどこにあるのか掴めない」——そんなときは、業務改善・経営改善のご相談で、現場まで一緒に降りて探すこともできます。