「黒字なのに、なぜかお金が残らない」。その原因の多くは、運転資金にあります。資金繰りに追われている会社ほど、この運転資金を“毎月”見る習慣が抜けがちです。難しい話ではありません。見るべきは3つの科目と、その増減だけです。
運転資金とは──売掛金+在庫−買掛金
運転資金とは、事業を回すために会社が“立て替えている”お金のことです。ざっくり、次の式で捉えます。
運転資金 = 売掛金 + 在庫 − 買掛金
- 売掛金:売ったけれど、まだ回収していないお金。回収するまで、外に出たままの状態
- 在庫:仕入れたけれど、まだ売れていない商品。仕入で払ったお金が、モノの形で寝ている
- 買掛金:仕入れたけれど、まだ払っていないお金。その分は、手元にお金が残っている
売掛金と在庫は「お金が出ていく側」、買掛金は「お金がまだ残っている側」。この差引が、あなたの会社が日々立て替えている金額です。ここが膨らむほど、手元の現金は苦しくなります。
まずは“今いくらか”と“推移”を掴む
運転資金は、一度計算して終わりではありません。見るときには、順番があります。
まずは、絶対額です。今月の運転資金がいくらだったのか、先月より多くなったのか、少なくなったのか。ここを掴むだけでも、「なぜ今月は資金繰りが苦しかったのか」の輪郭が見えてきます。
次に、その推移を見ます。毎月並べていくと、運転資金が増加傾向なのか減少傾向なのか、年間のどの時期に膨らんで、どの時期に落ち着くのか——季節変動のクセまで見えてきます。ここまで掴めれば、「いつ苦しくなりやすいか」を、前もって備えられます。
そのうえで、前の月と比べて、何が増えて、何が減って運転資金が動いたのか、その中身を見ます。3つの科目の動きは、それぞれこんなサインです。
- 売掛金が増えた → 回収が遅れている、あるいは売上は増えているが、まだお金が入ってきていない
- 在庫が増えた → 売れ行き以上に作りすぎ・仕入れすぎ。寝ているお金が増えている
- 買掛金が減った → 仕入が減った、あるいは支払いを済ませて手元のお金が出ていっている
さらにもう一歩、「なぜ、その科目が動いたのか」まで掘ります。なぜ売掛金が増えたのか、なぜ在庫が減ったのか。絶対額 → 推移 → 中身 → 原因、と一段ずつ下りていくと、手を打つべき場所がはっきりしてきます。毎月これを続けていれば、小さな予兆にも気づけます。たとえば「在庫が増えてきた」「売掛金が増えてきた」といった変化です。言い換えれば、対策のチャンスが早く見える、ということです。
運転資金の増減で、手元のキャッシュは動く
いちばん見てほしいのは、運転資金が前月より増えたか、減ったかです。ここに、「黒字なのにお金が残らない」の答えがあります。
- 運転資金が増える=その分、手元のキャッシュは出ていく。たとえ利益が黒字でも、売掛や在庫が膨らんで運転資金が増えれば、お金は減ることがあります。
- 赤字に加えて運転資金も増えると、キャッシュは大きく減ります。損益の赤字と、運転資金の増加が、二重に手元のお金を押し出すからです。
逆に言えば、運転資金を“減らす”方向——回収を早める、在庫を絞る——に動かせれば、利益とは別のところから、手元のお金が戻ってきます。だからこそ、毎月その増減を追うのです。
増減の“なぜ”を、業務で正す
数字の増減は、結果です。大切なのは、その裏にある業務を直すこと。
売掛金が増えているなら、請求のタイミングや回収のルールを見直す。在庫が増えているなら、発注や生産の判断を見直す。運転資金の管理とは、つまるところ日々の業務の管理です。数字を眺めるだけで終わらせず、「なぜ増えたのか」を一つずつ業務に戻して正していく。これが、資金繰りを内側から楽にしていきます。
まずは、3か月分を並べてみる
まず、直近3か月分の「売掛金・在庫・買掛金」を並べ、運転資金(売掛金+在庫−買掛金)が前月より増えたか減ったかを見てみてください。増えていれば、その分だけキャッシュが出ています。いちばん効いている科目の“なぜ”を探るのが、運転資金を締めていく出発点です。
「毎月どう見ればいいか」「どこから手をつけるか」を、御社の数字に合わせて一緒に整えることもできます。