決算の厳しい年が続くと、許可の更新が気がかりになります。愛知県で産業廃棄物収集運搬業の許可をお持ちで、来年以降に更新を控えている会社にかかわる改正があります。愛知県のお知らせ『産業廃棄物処理業の「経理的基礎に関する審査基準」の特例を廃止します。(お知らせ)』(令和8年9月18日更新)によると、更新の申請に限って置かれている「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例」(以下、この特例)が、令和9年4月1日から適用される改正後の審査基準で廃止されます。この特例の対象に当たる会社は、改正後は更新の申請でも「不許可」の区分になります。今日は、何が変わり何が変わらないのか、結果を左右する決算内容とはどういうものかを整理します。
更新の申請だけに置かれている特例が、改正後の審査基準でなくなる
審査基準は、損益計算書上の経常利益に減価償却費を加えた額(県の呼び名は「経常利益金額等」。以下「経常利益+減価償却費」)を判定に使います。経常利益が赤字でも、減価償却費を足すとプラスになることがあります。
この特例の対象は、営業実績が3年以上ある法人で、次の3つがすべてそろう場合です。
- 直前事業年度に、債務超過である(純資産の合計がマイナス)
- 直前3年の「経常利益+減価償却費」の平均が、マイナスである
- 直前事業年度の「経常利益+減価償却費」も、マイナスである
個人(営業実績3年以上)では、直前事業年度に資産より負債が多く、直前3年とも所得税を納めていない場合です。
この区分は、新規・変更の申請では、県の「経理的基礎に関する審査の考え方」の表で「不許可」です。更新の申請だけは、現在の審査基準に「当面の間」の特例として、経営の悪化が新型コロナウイルス感染拡大の直接的又は間接的な影響によることと、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを経営診断書で証明できれば、それを経理的基礎の基準とする定めがあります。
県の考え方は、診断書の内容だけで経理的基礎の有無を判断するものではない、としています。そのうえで、廃止を待たなくても、感染拡大から年数が経った今、経営の悪化がその影響によることを示すには、客観的に分かる根拠が求められる可能性があると、弊社は考えています。弊社が経営診断書に新型コロナウイルス感染拡大の影響を記載する場合も、同じように、客観的な根拠があるかどうかを確かめることになります。
改正後の審査基準では、この特例の項目が丸ごと削除されています。お知らせでは、その理由を「令和5年に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、3年が経過したことを踏まえ、この特例を廃止し、審査基準の改正を行います」と書いています。以後は更新の申請も、新規・変更と同じ「不許可」の区分です。
積替保管を含む収集運搬業・処分業の審査基準も、同じく改正されます(お知らせは産業廃棄物処理業の更新許可申請の特例として廃止を案内しています)。
ほかの区分の基準も、経営診断書を作成できる資格も変わらない
ほかの区分(経営診断書が必要な区分、条件しだいで必要になる区分、原則として経理的基礎が認められる区分)の基準は、改正の前後で同じです。経営診断書を作成できる資格も、これまでどおり中小企業診断士又は公認会計士です。新規・変更の申請の基準も変わらないと、お知らせにあります。
結果を左右するのは、更新の申請に使う決算
判定に使うのは「直前事業年度」と「直前3年」の決算です。更新の申請には、直前3年の各事業年度の貸借対照表・損益計算書や確定申告書の写しなどを添えます(県の提出書類一覧表)。つまり、申請の時点で決算と申告が済んでいる、いちばん新しい期が「直前事業年度」です。なお、申請から審査までの間に令和9年4月1日をまたぐ場合にどちらの審査基準で見るのかは、お知らせや審査基準には書かれていません。ただ、改正の前後で違うのはこの特例があるかどうかだけです。どちらで見られるかが結果に関わるのは、この特例の対象に当たり、経営の悪化が新型コロナウイルス感染拡大の影響によることと、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを示せる場合に限られます。そうした場合で申請の時期が近いときは、所管の東三河総局又は県民事務所に確かめておくと安心です。
法人は、次のどれか1つを満たせばこの区分から外れます(審査基準 第1の1)。
- 直前事業年度の「経常利益+減価償却費」が0以上
- 直前3年の「経常利益+減価償却費」の平均が0以上
- 直前事業年度に債務超過でない
個人では、直前事業年度に資産が負債以上であるか、直前3年のうち1年でも所得税を納めていれば、この区分から外れます(審査基準 第2の1)。
ただし、不許可の区分を外れることと、経営診断書が要らなくなることは、同じではありません。ここから先の例は、積替保管を除く収集運搬業の場合です(積替保管を含む収集運搬業・処分業では、区分の分かれ方が一部異なります)。
たとえば債務超過のまま、「経常利益+減価償却費」が直前事業年度だけプラスなら、経営診断書が必要な区分です。3年平均だけプラスなら、条件しだいで必要になる区分(県の表では「必要時診断書」。赤字の膨らみ方などの条件に当たったときに経営診断書が必要)です。債務超過を外れても、「経常利益+減価償却費」が直前事業年度・3年平均ともマイナスなら、自己資本比率(純資産÷総資産)が10%未満で経営診断書が必要な区分、10%以上で条件しだいで必要になる区分になります。条件に当たらなくても、赤字が大きい・自己資本比率が低いなどの事情によって提出を求められることがあります(提出書類一覧表)。
申請に使う決算までに、黒字化か、債務超過を埋める増資か
法人の場合、この区分から外れる3つの条件のうち、3年平均はすでに締まった2期分を含むので、今期だけで動かせる幅は限られます。自社がこの区分に近いなら、申請に使う決算の期末までに取り組めるのは、主に、直前事業年度の「経常利益+減価償却費」を黒字にするか、債務超過を穴埋めできる分だけ増資をして債務超過から抜けるか、のどちらかです。増資の税の扱いなどは、税理士など専門家にご相談ください。
黒字化の側では、「経常利益+減価償却費」は結果で、動かせるのはその裏の業務と採算です。採算の合わない仕事や、手間や費用がかさむ作業はないか——赤字の原因を業務のなかに探して止めていくことが、黒字化への近道です。
経営診断書は、今後5年間の収支計画に基づき、5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを示すものです。
いま検討する改善策は、経営診断書が求められたときの収支計画の中身にもなります。
申請に使う決算がすでに締まっている会社は、自社の区分を見極めておく必要があります。経営診断書が求められる区分なら、収支計画の準備を早めに進められます。まだ締まっていない会社には、その決算の数字を、これからの取り組みで変えていく時間があります。
本記事は、2026年10月16日時点で愛知県のホームページに掲載されている審査基準などに基づく一般的な考え方の紹介であり、個別の許可の審査の結果を保証するものではありません。
経営診断書が求められる区分に当たりそうなときは、愛知県で経営診断書が必要になる条件(判定の表)のページで区分ごとの条件をご覧いただけます。弊社では中小企業診断士が経営診断書を作成しており、お申し込みもお受けしています。