2027年4月、技能実習制度は育成就労制度に切り替わります。運用要領は、これを技能実習制度を抜本的に見直した新たな制度と位置づけています。この記事では、受入企業の立場から、技能実習制度と何がどう変わるのかを、制度・手続き・監理支援機関・外国人の保護の4つの面から整理します。
なぜ制度が変わるのか──改正の背景
技能実習制度は、「技能移転による国際貢献」を目的として運用されてきました。しかし運用要領は、この制度について「様々な課題が指摘されていました」と率直に記しています。
その一方で、日本では人手不足への対応の一つとして外国人材の受入れが欠かせない状況となり、2019年に特定技能制度の運用が始まりました。目的が「国際貢献」である技能実習制度と、「人手不足への対応」である特定技能制度が並び立つ状態が続いてきたということです。
こうしたなか、2024年6月21日に改正法が公布され、2027年4月1日から育成就労外国人の受入れが始まります。運用要領は、これにより技能実習制度は発展的に解消され、特定技能制度との連続性を有し、外国人の人権を適切に保護しつつ、外国人が日本でキャリアアップできる分かりやすい制度として育成就労制度が創設された、と説明しています。
つまり、建前と実態の食い違いを解消し、「育成就労(3年)→特定技能1号」という一本の道筋に整理した、というのが今回の改正の背景です。
まず全体像──技能実習制度と育成就労制度の主な違い
変更点の全体像は、次のとおりです。
- 制度の目的:技能実習は「人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進」を目的としてきましたが、育成就労は「人材育成と人材確保」を目的とします
- 受入れできる分野:育成就労は育成就労産業分野(分野別運用方針で指定)に限られます
- 転籍:技能実習では例外的でしたが、育成就労では本人の希望による転籍が制度として認められます
- 期間:育成就労は基本的に3年間の計画を作成し、特定技能1号への移行を見据えます
- 日本語能力:終了時の到達目標として計画に定めることが必須になります
- 実施機関:外国人技能実習機構は外国人育成就労機構となります
- 監理団体:監理支援機関となり、改めて許可を受ける必要があります
以下、受入企業の実務に関わる部分を順に見ていきます。
1. 受入れできる分野が限定されます
育成就労制度の目的は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、その分野における人材を確保することとされています。受入れができるのは、分野別運用方針で定められた育成就労産業分野に限られ、分野ごとの受入れ見込数も示されます。
自社への影響:自社の業種・業務が育成就労産業分野に含まれるかの確認が、すべての出発点になります。
2. 本人の希望による転籍が認められます
受入企業にとって、実務上もっとも大きな変化です。分野ごとに定められた転籍制限期間(分野別運用方針において1年から2年の範囲内で設定)を過ぎれば、本人の希望で別の会社へ移ることが認められます。
- 転籍先などから、それまでの育成就労計画や渡航に要した航空券の領収書等の写しの提供を求められた場合、拒否できません
- 転籍を妨害する行為は認められません
- 1年を超える転籍制限期間を設定する場合は、その分野の運用方針が定める昇給等の待遇向上が必要です
- 自社の判断で転籍制限期間を1年に短縮することも可能で、その場合は待遇向上の義務は課されません
- 本人が転籍を希望して届出をする場合、企業側には他の育成就労実施者や監理支援機関との連絡調整等の措置義務が生じます
自社への影響:「一度受け入れたら期間中は在籍し続ける」という前提が成り立たなくなります。転籍制限期間を何年に設定するか、待遇向上にどう取り組むかは、経営判断の対象です。
転籍を制度で止めることはできません。だからこそ、選ばれ続ける職場であるかどうかが問われます。
3. 技能と日本語能力の到達目標が必須になります
育成就労計画には、終了時に到達すべき技能と日本語能力の水準を目標として定めなければなりません。技能は3級の技能検定または育成就労評価試験(専門級)等の合格、日本語能力は「原則として日本語教育の参照枠のA2相当水準」とされ、終了までに試験の合格によって確認されます。分野によっては、これより高い水準が設定される場合もあります。
自社への影響:働いてもらうだけでなく、期間内に目標を達成させる責任が計画上明確になります。日本語学習の機会をどう確保するかが、新たな検討事項です。
4. 送出機関との契約に、注意点が加わります
技能実習制度では、本人やその家族から高額な手数料等を徴収する悪質な送出機関の存在が指摘されてきました。育成就労では、認定基準として本人が送出機関に支払う費用の上限が設けられ、送出機関の要件も厳格化されます。二国間取決めに基づき、送出国政府が認定した送出機関が機構のホームページに掲載される仕組みも導入されます。
あわせて、受入企業と送出機関との間で違約金等を定める契約も禁止されます。運用要領は、行方不明時の制裁として送出機関が受入企業へ違約金を支払う契約などを、想定される例として挙げています。技能実習制度では、こうした契約を締結したことで監理団体の許可が取り消された事例もあります。
自社への影響:送出機関との契約書に違約金の定めが含まれていないか、内容の確認が必要です。
5. 監理団体は「監理支援機関」へ。許可の取り直しが必要です
技能実習制度の監理団体は、育成就労制度では監理支援機関となります。技能実習制度で監理団体の許可を受けていた団体も、別途、監理支援事業の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできません。許可申請は機構本部事務所の審査課で受け付け、最終的な許否は主務大臣が判断します。
また、独立性・中立性を担保する観点から、監理支援を行う育成就労実施者は原則として2者以上であることが求められ、外部監査人の設置も許可申請の記載事項とされています。監理支援機関は3か月に1回以上の監査を実施し、監査報告書を機構へ提出します。
自社への影響:現在委託している監理団体が、育成就労制度下でも監理支援機関として許可を受ける見込みかどうか、早めに確認しておく必要があります。
6. 外国人の保護が強化されます(罰則つき)
育成就労法では、受入企業や監理支援機関による次の行為が禁止され、罰則が定められています。
- 旅券・在留カードの保管:本人の同意の有無や理由によらず禁止。意思に反して保管した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
- 私生活の自由の不当な制限:携帯電話等の私物の取り上げ、外出の一律禁止(合理的理由のない一律の門限を含む)、男女交際の禁止、妊娠しないことの誓約、医療機関の受診を阻害する行為、居室へのカメラ設置などが該当します
- 違約金・保証金:本人やその親族との間で違約金・損害賠償額を予定する契約、貯蓄金の管理契約は禁止。保証金の徴収も、名目を問わず禁止されます
- 暴行・脅迫等による強制:1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金
また、法令違反があった場合、本人は出入国在留管理庁長官・厚生労働大臣に申告でき、申告を理由とする不利益な取扱いも禁止されています(違反時は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。
自社への影響:寮の門限、私物の管理、健康保険証の取り扱いなど、これまでの社内ルールが禁止行為に該当しないか、点検しておくことをおすすめします。
申請・届出の手続きは、こう変わります
- 計画認定の申請時期:育成就労開始予定日の6か月前から可能。原則として4か月前までに申請が必要です(これを過ぎると開始が予定日を超過する可能性があります)
- 認定手数料:育成就労計画1件ごとに手数料がかかり、口座振込で納付します(金額は機構のホームページで案内されます)
- 転籍のたびに、新たな計画認定が必要です。転籍先として受け入れる場合も認定申請が発生します
- 実施状況報告:毎年4月1日から5月31日までに機構へ提出。行方不明者が3人以上かつ20%以上の場合は、防止対策に関する理由書の提出も必要です
- 施行前から申請を受け付けます:施行後早期に受入れを開始したい企業向けに、施行日前の申請が可能とされ、原則として開始予定日の7か月前から5か月前までに申請することとされています(詳細は別途案内)
まとめ──今日できる一歩
まずは、自社の業種が育成就労産業分野に該当するか、そしてその分野の転籍制限期間が何年に設定されるかを、分野別運用方針で確認してみてください。あわせて、寮や私物の管理といった社内ルールが禁止行為に触れていないかの点検も、今のうちに進めておける一歩です。
本記事は、出入国在留管理庁・厚生労働省編「育成就労制度 運用要領」(第2章・第4章・第5章・第6章)に基づく一般的な考え方の紹介です。個別の審査の結果を保証するものではありません。
なお、直近期末が債務超過の場合、技能実習計画の認定・更新にあたって、第三者による改善の見通しの評価書が必要になることがあります。詳しくは企業評価書のページをご覧ください。