更新の申請で、「直近期が債務超過なので、1年以内に解消する見通しを示してください」と言われて、言葉を失った経営者の方がいます。1年でどうにかなる保証などない——そう感じるのは当然です。今日は、なぜ「1年以内」が求められるのか、そして何を示せば認められるのかという話をします。
そもそも、なぜ「1年以内」なのか
債務超過になると、一般的には信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況と見られます。本来であれば、事業の継続性を認めにくい状態です。ただ、債務超過になったからといって、その企業がすぐに立ち行かなくなるとは限りません。そこで、直近期末で初めて債務超過になり、直近期前期末はそうでなかった場合に限り、1年以内に解消できる見通しがあることを前提に、継続性を認めるという運用になっています。「1年」という短さは、猶予であると同時に、本気度を測る期間でもあるということです。
問われているのは「結論」ではなく「妥当性」
ここで一番つまずきやすいのが、「大丈夫です、改善します」という結論だけで済ませてしまうことです。求められているのは、1年以内に解消できるという見通しが、どれだけ妥当か——そして、その妥当性を裏づける評価の根拠となる理由です。「評価の根拠となる理由が記載されているものに限る」というのは、法令の中で明記されている条件です。結論だけの書面は、要件そのものを満たしません。
妥当性を示すための材料はいくつかあります。まず、直近期だけでなく直近期前期以前からの売上高・利益・純資産の推移を並べてみると、どのくらいのペースで悪化してきたのか、回復の兆しは出ているのかが見えやすくなり、1年以内という見通しの説得力が増します。あわせて、なぜ債務超過に至ったのか——景気や取引先の倒産、原材料価格の高騰といった外的な要因と、価格設定や原価管理、不採算な取引の放置といった内的な要因を押さえておくと、どこに手を打てば1年以内に効果が出るのかを考えやすくなります。ここで求められているのは、原因そのものを詳しく説明することではなく、1年以内に解消できるという見通しに、筋の通った根拠を添えることです。
そのうえで、すでに着手している改善の取組みがあれば、それは実績として書けます。「これからやります」より、「すでにこう動いていて、こう繋がっている」の方が、はるかに説得力があります。そして最後に、解消すべき債務超過の額と、そこに至る道筋——利益の積み上げなのか、増資や資本性の資金調達なのか、あるいは不要な資産の整理なのか——を数字で示します。原因・実績・道筋がそろって初めて、「1年以内」という短い期間に見合った妥当性になります。
それでも1年で解消できない場合は
2期連続で債務超過が続いている場合や、2期連続で本業の利益(売上総利益)が出ていない場合は、原則として継続性は認められにくくなります。ただし、設立5年以内の非上場企業(新興企業)に限り、柔軟に判断される仕組みがあります。独自性のある技術やサービス、新しいビジネスモデルに基づいて事業を伸ばそうとする企業は、立ち上がりの時期に赤字が続くこともある——という前提に立った例外です。
この場合、評価書だけでは足りません。投資家やベンチャーキャピタル、銀行等からの投融資に取り組んでいることを示す書類、製品・サービスの開発や顧客基盤の拡大に取り組んでいることを示す書類もあわせて求められます。評価書による見通しの説明と、これらの書類が示す事業の実態を踏まえて、債務超過となっていることについて合理的な理由があるかどうかが、総合的に判断されます。該当するかどうかも含めて、早めに確認しておくべき点です。
まとめ──今日できる一歩
まずは、直近期末の債務超過の額を、数字で書き出してみてください。そして、その原因を「外的な要因」と「内的な要因」に分けてメモしてみる。この2つがあるだけで、1年以内の見通しを立てるための土台ができあがります。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
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