産業廃棄物収集運搬業の許可更新で、決算書を出せば済むと思っていたら「もう1枚出してください」と言われた——赤字や債務超過が続いている会社ほど、この場面に出くわします。最初に迷うのは、その1枚を誰に頼めばいいのかです。財務の書類なのだから顧問税理士に、と考えるのが自然ですが、実はそこが分かれ目になります。今日は、47都道府県すべての公表資料を確認したうえで、この書類を誰が作成できるのかを整理します。
なお本記事で扱うのは、都道府県知事が許可する収集運搬業(積替え保管を除く)です。処分業や、市内で完結する収集運搬・積替えを行う区域については、政令指定都市20市・中核市62市が許可権者になる場合があります(廃棄物処理法施行令第27条)。また同じ県でも、積替え保管の有無で求められるものが変わることがあります。宮城県・滋賀県・岡山県は、積替え保管を伴う収集運搬業や処分業では、財務状況が一定の条件に当たると中小企業診断士や公認会計士が作成した診断書等を求めています。一方、積替え保管を伴わない収集運搬業では、原則として申請者が作成する様式や申立書で足ります。ただし岡山県は、県民局が必要と認めた場合には積替え保管のない収集運搬業にも同じ扱いをすることがある、と定めています。県名だけで「ここは資格者が必要」と一括りにはできない、ということです。
その”もう1枚”は、県によって名前が違う
まず、この書類には全国共通の名前がありません。「経理的基礎を有することの説明書」(東京都)、「財務診断書」(埼玉県)、「経営診断書」(岩手県・群馬県ほか)、「長期財務計画書」(山形県・高知県)——提出先ごとに呼び名が変わります。決算書をもとに財務の実態を分析し、これから先の見通しを示すという性質は共通していますが、様式も条件もそろっていません。
そして、名前より大きく違うのが「誰が書けるか」のほうです。ここは、県ごとに設計から異なります。
専門書類の作成者が国家資格者に限定されている県がある
47都道府県の手引き・審査基準・様式を読み比べると、作成者の定め方は次のように分かれていました。いずれも財務状況が引き金になって初めて求められる書類です。以下は「該当した場合に、誰が書くことになるか」の話です。
- 国家資格者が作成者として名指しされている県。中小企業診断士だけが名指しされているのが群馬県・石川県・静岡県・茨城県、中小企業診断士または公認会計士が岩手県・福島県・埼玉県・山梨県・長野県・岐阜県・愛知県・大分県、そこに税理士が加わるのが東京都、さらに行政書士まで含むのが栃木県です。なお茨城県は「中小企業診断士等の専門家」という書き方で、公認会計士や税理士の名前は挙げられていません。
- 有資格者の書面が「選択肢の一つ」とされている県。北海道・青森県・富山県・三重県・愛媛県・熊本県・沖縄県は、金融機関の融資証明や自社で作る計画書と並べて挙げられています。山形県・新潟県は少し書き方が違い、県が必要と認めたときに提出を求めることがある、とされています。いずれも、有資格者の書面でなければならない、とは書かれていません。ただし三重県には、売上高の前期比伸び率が15%を超える場合に、県との協議のうえ中小企業診断士の診断書を必要とする、という枝があります。
- 作成者の資格が定められていない県。県の様式に申請者が記入して提出する形で、作成者欄・資格欄がありません。数としては、これがいちばん多くなります。
「顧問税理士に頼めますか」——名前が出てくるのは、東京都と栃木県だけ
作成者の資格が名指しされている県のうち、税理士の名前が出てくるのは東京都と栃木県だけです。資格が名指しされているほかの県では、税理士は作成者として挙げられていません。たとえば埼玉県は「『財務診断書』は、中小企業診断士又は公認会計士の資格を有した方が作成し、有資格者の登録書等の写しを添付してください」(許可の手引き)と書いています。ここに顧問税理士が作成した書面を出しても、要件には合いません。
ただし、これは「税理士には頼めない」という話ではありません。作成者の資格が定められていない県では、制度上その制約がありません。様式が申請者名義なので、顧問税理士や行政書士が実務として整えても妨げられていませんし、県の数としては、むしろこちらが多数です。頼める・頼めないは、資格の優劣ではなく、提出先の都道府県がどう定めているかによります。
なぜ第三者なのか——県の書きぶりから読み取れること
そもそも、なぜ申請者本人ではなく、外部の資格者が書くことになっているのか。理由まで書いている県は多くありません。確認した範囲では、静岡県が理由を明記していました。
診断者 中小企業診断士とします。経営コンサルタントを業務とする唯一の国家資格であり、専門的知識と経験により、責任を持って今後の経営改善に係る評価ができると考えられるためです。
静岡県「中小企業診断士の診断書等について」1 診断者より。
第三者であることを、条文で書き込んでいる県もあります。栃木県は作成できる行政書士を、県行政書士会の特別研修会の修了者で、かつ「当該許可申請書の作成又は申請の代理を行う行政書士とは別の行政書士に限る」(審査基準)と定めています。申請を代理する人には書かせない、という設計です。また東京都と栃木県は作成者の資格を証明する書類の添付を、静岡県は中小企業診断士の登録証の写しを求めています。誰が書いたのかを、後から確かめられるようにしてあるということです。
こうした静岡県・栃木県・東京都の書きぶりからは、外部の目による財務状況の分析と、確実な改善の見通しを求めていることがうかがえます。客観性を重視している都道府県は第三者の国家資格保有者を作成者に限定している一方で、そこまで厳格にしておらず申請者自身の作成でも認めているところもあるというのが現状です。
まずは、提出先の手引きで「誰が作成するか」を探す
自社が対象になりそうかは、直近3期の決算書を並べて、次の4点を見ておくと、おおよその見当がつきます。
- 直前期が債務超過か
- 直前期の損益計算書の経常利益(当期純利益)が赤字か
- 3年平均の経常利益(当期純利益)がマイナスか
- 3年の経常利益(当期純利益)の合計がマイナスか
細かい判定の仕方は県ごとに違いますので、ここは大雑把に掴むための目安と考えてください。
そのうえで今日できるのは、提出先の都道府県の手引きを開いて、この書類を誰が作成するのか、書かれている箇所を探すことです。ひとまとまりに書かれているとは限らず、判定表の中にある県も、必要書類一覧の注記や別立ての案内ページに置かれている県もあります。「中小企業診断士又は公認会計士が作成した」とあれば、頼む先はそこで決まります。何も書かれていなければ、資格は問われていないということです。
もっとも、書類は通過点です。求められている中身は、これから先どう収支を立て直すのかという見通しのほうで、それを形にするのは日々の業務です。書類を整えることと、稼ぐ力を戻していくことは、同じ線の上にあります。
本記事は2026年8月時点で各自治体が公表している資料に基づく一般的な整理です。実際の取扱いは改正・運用で変わることがありますので、必ず所管の窓口にご確認ください。
「うちの提出先はどう書いてあるのか」「この書きぶりだと、結局どこに頼むことになるのか」——手引きを開いても判断がつかないときは、産業廃棄物許可 経営診断のページで、経営診断書の作成のご依頼を承っています。