評価書とあわせて、収支計画や資金繰り表まで作成します、という事務所もあります。今日は、これが制度として本当に必要なものなのかを、運用要領の条文から確認します。
運用要領が求めているのは2つだけ
技能実習・特定技能・育成就労、いずれの制度でも、債務超過が確認された場合に提出を求められる書類は、①直近2事業年度の貸借対照表・損益計算書等の写し ②第三者による改善の見通しの評価書面の2点です。運用要領の全文を確認しても、これ以上の書類を一律に求める記載はありません。決算書の写しは会社側で用意でき、評価書は第三者が作成する——この2点で審査の材料としては完結する設計になっています。
収支計画・資金繰り表は、条文のどこにも出てこない
ここは、依頼する側にとって費用に直結する部分です。求められていない書類まで一式で見積もられていれば、そのぶん金額は上がります。制度が求めている範囲を知っておくだけで、見積もりの読み方が変わります。
「収支計画」「損益計画」「資金繰り」といった言葉を、技能実習・特定技能・育成就労のいずれの運用要領で探しても、評価書の添付として求める記載は見当たりません。育成就労の運用要領が名指しした記載事項(債務超過に至った理由・改善に向けた取組み・解消見込み時期・作成日と評価者名の4項目)にも、収支計画は含まれていません。
制度が一律に求めているのは「評価書1本」です。収支計画・資金繰り表が必要になるとしても、それは個別の事情による追加対応です。
求められるとすれば、評価書の根拠が薄いとき
実務では、機構や入管から、審査の過程で追加の資料を求められることがあります。これは、逆にいえば評価書そのものの根拠が薄いときに起こりやすいことだといえます。改善の見通しとその根拠がしっかり示されている評価書であれば、よほどの事情がない限り、収支計画まで追加で求められることは少ないと考えられます。一方、資金繰り表については、現預金の水準が極端に少ないなど、資金繰りそのものに強い懸念がある場合に、一般論として求められる可能性はあります。
見積もりや提案のなかに、収支計画・資金繰り表の作成があらかじめ含まれている場合は、「これは本当に必要なものですか」と一度確認してみるとよいでしょう。
もう一つ、追加の資料を求められたときに慌てないためには、根拠となる数字を日頃から手元に置いておくことが効きます。月次の試算表が遅れずに出ている会社は、こうした場面で強いといえます。
評価書の中身で足りることが多い
収支計画を別紙で作らなくても、評価書の中の「改善の見通し」の章で、利益の見通しや解消時期を根拠とともに述べれば、要件としては足りることが多いといえます。数値の裏づけは、決算書の推移と、それに基づく見立てを言葉で説明する形で対応でき、独立した数表を新たに組み立てる必要は、基本的にはありません。
作るなら、提出のためでなく、自社のために
ここまで「制度としては求められていない」と書いてきましたが、収支計画や資金繰り表そのものに意味がない、という話ではありません。むしろ逆で、債務超過を解消していく過程では、この2つは自社にとって非常に役に立つ道具です。
資金繰り表は、これから先に手元のお金がどう動くかを映します。試算表が過去しか語らないのに対して、資金繰り表は未来を見せてくれます。収支計画は、いつまでにどれだけの利益を積めば債務超過が解消するのか、その道のりを数字にしたものです。どちらも、提出のためというより自社が毎月見比べるための地図だといえます。
ですから、判断の順番はこうなります。提出書類として必要かと問われれば、制度上は一律には求められていません。ただ、改善を本気で進めるなら、提出の有無とは関係なく手元に持っておきたい——この二つを分けて考えると、費用をかける先も見えやすくなります。
まとめ──今日できる一歩
評価書を依頼している専門家から「収支計画も合わせて」と言われたら、それが機構・入管から実際に追加で求められた対応なのか、それとも念のための提案なのかを一度確認してみてください。制度が求めているものと、任意で付け加えられているものを分けて考えると、必要な費用と手間が見えやすくなります。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
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