技能実習の運用要領を読むと、「財務的基盤が必要」という言葉が、受入企業にも監理団体にも出てきます。ただ、実際に何を求められるかは、この2つでまったく違います。今日は、その違いを運用要領の言葉で確認します。
受入企業に求められるのは「総合的な勘案」
技能実習の実習実施者(受入企業)については、運用要領はこう定めています。「技能実習を継続して行わせるに当たって、実習実施者は、一定程度の財務的基盤を有することが必要です。この点については、実習実施者の事業年度末における欠損金の有無、債務超過の有無等から総合的に勘案されることになります。」直近期末が債務超過であっても、それだけで一律に不可とされるわけではなく、他の要素とあわせて総合的に判断される、という位置づけです。ここで確認書類として求められるのが、第三者による改善の見通しの評価書面です。
「総合的に勘案」という言葉は、裏を返せば、債務超過という一点だけで判断されるわけではないということでもあります。欠損金の有無、債務超過の有無「等」と書かれている以上、そこには数字以外の事情も含まれ得ると読めます。だからこそ、第三者の評価書という形で、数字の背景と改善の見通しを説明する余地が残されているのだと考えられます。
監理団体に求められるのは「今期中の確実な解消」
一方、監理団体については、次のように定められています。「直近の財務諸表(貸借対照表)で債務超過となっていないこと、又は直近の財務諸表(貸借対照表)で債務超過となっている場合には…今期の決算における債務超過の解消が確実視されることが必要です。」
挙げられている措置も具体的です。増資が実施済みである(登記簿等により確認できること)。債権者による債権放棄がなされている。組合費・賦課金等による収益で解消することが総会等決定機関ですでに決定されている——いずれも「これから取り組む予定」ではなく、すでに実行・決定済みであることが求められています。
受入企業に求められるのは「総合的な勘案」。監理団体に求められるのは「今期中の確実な解消」。同じ「財務的基盤」でも、言葉の強さがまったく違います。
なぜここまで差があるのか
監理団体は、傘下の複数の受入企業を監督する立場にあります。監理団体自身の財務基盤が揺らげば、その影響は傘下の実習実施者すべてに及びかねません。だからこそ、受入企業より高い確実性——今期中に、すでに実行・決定済みの措置で解消できていること——が求められているのだと考えられます。
もっとも、この差は監理団体を厳しく縛るためというより、役割の違いから来るものだと考えられます。受入企業は自社の事業を立て直せばよいのに対し、監理団体は他社の受入れを監督し続ける立場にあります。監督する側が自らの財務で足元を揺らしていては、その監督そのものが機能しにくくなります。
受入企業が示すのは、数字そのものより「筋道」
受入企業の立場で評価書を用意するとき、つい「どれだけ数字が良くなったか」を前面に出したくなります。ただ、求められているのは今期中の完全な解消ではなく、改善に向かっているという見通しです。なぜ債務超過に至ったのか、その原因に対して今どう手を打っているのか、その結果いつごろ解消できる見込みなのか——この筋道が通っていることの方が、単年の数字の良し悪しより重く効きます。
そして、この筋道を作れるかどうかは、書面の書き方ではなく、実際の業務が変わっているかどうかで決まります。赤字が続いて債務超過に至ったのであれば、その赤字を生んでいる場所が、業務のどこかにあるはずです。そこに手を入れないまま見通しだけを書いても、翌年また同じ書面を書くことになります。
まとめ──今日できる一歩
監理団体の立場にある方は、増資・債権放棄・総会での解消決定など、すでに実行・決定済みの措置が自社にあるかを一度洗い出してみてください。受入企業の立場にある方は、今期中の確実な解消までは求められていない、という水準の違いを踏まえたうえで、専門家に相談してみることをおすすめします。
本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の審査の結果を保証するものではありません。
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